|
小学生、中学生の頃。
新しい教科書を持って帰ると、父がそのすべての表4ページに、筆で名前を書いてくれた。
墨ではなくて、油性の白い塗料。
おそろしく上手な楷書なので、何か印刷機のようなものを使って印字しているのだと思った同級生もいたぐらいだ。
父は若い頃、筆耕をしていたこともあったようだ。
今はなくなった職業だが、謄写版の原紙に文字を書き込む仕事である。
レタリングもやっていた。
頼まれて賞状のようなものにも字を書いていた。
寺へ墓参りに行くと、父の書いた文字が出迎えてくれていた。
その案内板は古くなったので、もう他のものに変わっている。
家族にそういう人がいると、他の者は字が下手になる。
何かというと父に字を書いてもらうので、自分で書かなくなるのだ。
祝儀袋に字を書かなければならない時など、もう少し真面目に練習しておけばよかったかなと思う。
字が下手糞なおかげでキーボードになじむのが速かったというところもあるので、あまり真剣に反省しているわけでもない。
日本語の文字が下手なのは、とっくにあきらめている。
でも、アルファベットならまだどうにかなるのではないかと、時々思う。
時々ね。
学生時代に奮起して買ったモンブランは、とても書き味がよかった。
安物だけれど、どこかに行ってしまったのが残念だ。
それで、手ごろなモンブランを見かけると買うことがある。
いい感じだが、あの頃ほどしっくり来ない。
80年代には、シェーファーの500円万年筆がお気に入りだった。
ポップなデザインのものをいろいろ揃えることができるのも楽しかった。
カリグラフィ用もあって、ちょっと面白い字が書けた。
ただ、インクが高かったんだよなあ。
90年代には使わなくなってしまった。
それをふと思い出した。
本格的にカリグラフィーを学ぼうという気はないけれど、楽しいペンが出ているようだ。


The Bible of Illuminated Letters: A Treasury of Decorative Calligraphy (Quarto Book)


|