さようなら、南セントレア!

「南セントレア市」は幻に終わった。
隣接する市にできた空港の怪しい名前を採用するという合併協議会の目論見は、住民が合併そのものを拒むことによって完全に否定された。
私は美浜町の住民でも南知多町の住民でもないので、まったくの他人事として「南セントレア市」はおもしろいなあと思っていた。
「平成の大合併」なる愚かな行政を歴史に刻み込むには、いい名前ではないかと思ったのだ。
もちろん誰だってそんな愚かな名前のところに暮らしたくはないわね。
さようなら、南セントレア!

CHRONICLES #85 地図のない町

千本浜2005年2月11日
ローマックスのロフトで観たマイク・シーガーの演奏は、ディランにとって初めての霊的体験と呼べるものでした。
その時に自分が変わらなければならないのだと気づいたのですが、それをいろいろな表現で書いています。
最後に出てくるのが、地図の比喩です。
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I had the map, could even draw it freehand if I had to. Now I knew I’d have to throw it away. Not today, not tonight, sometime soon, though.
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いつだかわからないけど、近いうちにおなじみの地図を捨てなければならないのです。
でも、それで迷うことはないんですよ。
二十歳前のディランの未来は、輝いて見えます。
マイク・シーガーはフォークウェイズ(Folkways)のモウ・アッシュ(Moe Asch)と話をしています。
ああ、フォークウェイズ!
その時ディランが最も注目していたレーベルなのです。
マイクがいるランブラーズのレコードも、全部フォークウェイズから出ていました。
こことレコーディングの契約できたらいいのになあというのがディランの気持ち。
そろそろ帰らなければならないので、パーティの主役である、死期の近いシスコ(Cisco)のところへ簡単な挨拶に行きます。
このところ病院へウッディを見舞っているのだと言います。
シスコは微笑んで、「ウッディは何もごまかしのないやつだ。今度行った時によろしく伝えてくれ」と言ってくれます。
ディランとデロレスは部屋を出て行きます。
ただいまp.72です。
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串にどて

木村充揮さんの「天王寺」に、「どて」が出てきます。
この「どて」を食べたことがないんですわ。
googleすると、すぐにわかりました。
 →どて焼き
名古屋の味噌おでんはおなじみで好きなんです。
八丁味噌で甘く煮込んであるやつ。
似たようなものかと思っていたら、だいぶ違うんですな。
どて焼きは白味噌仕立てで、食感はもう少しコリッとしてしているようで。
ついでに串カツ。
 →串カツ
 ♪ 安酒飲んで 串にどて
 ♪ 5月にゃ野音で 春一番
ああ、楽しみだ。

美代子阿佐ヶ谷気分

安部慎一さんの『美代子阿佐ヶ谷気分』を買った。
表題作はあの時代の傑作だと思う。
岡林信康さんが「あんたにゃわかるめー」と歌う絵が挿入されたりする。
黒目ばかりの美代子さんの、独白だけで成立しているマンガ。
以前CAT-Oさんが採り上げてました。
安部さんの略歴や絵はそちらをご覧ください。
 →その後の「美代子阿佐ケ谷気分」…安部慎一の“私マンガ”
 阿佐ヶ谷の
 彼の部屋であたし
 平和よ
 《キスマーク》
アベシン、オウジと並び称されていたころ、『月刊ガロ』を読んでいたのだが、実はアベシンのマンガはちょっと苦手だった。
なんだかいやらしいなという気持が先に立ってしまったのだ。
あれ。
「三バカ」という言い方をしていたと思うのだが、もう一人は誰だったんだっけな。
最後に入っている「キス」という作品は、私の好きな鈴木翁二さんの「ギター壊し浮かれた」に絵もコマ割りも似てるんだけど、この2作品はどういう関係なんだろう。
 →2004年2月18日付日録:70年代フォークとガロ
さらに疑問。
明治時代の筑豊を描いた作品があったと思うのですが、未完のままなのかな。
最近知ったのですが、この安部慎一さんの息子さんたちがバンドをやっています。
 →SPARTA LOCALS
安部慎一『美代子阿佐ヶ谷気分』
安部慎一
『美代子阿佐ヶ谷気分』
 ワイズ出版
 A5判並製 本文251p
 2000年7月3日発行
 定価:本体1800円+悪税

CHRONICLES #84 僕の歌

千本浜 2005年2月23日

マイク・シーガーの完璧な独演に夢中になりながら、ディランは自分のことを考えました。
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僕が取り組まなければならないものを、マイクは既に遺伝子の中に、その遺伝子の構造の中に持っていた。この音楽は、生まれる前からマイクの血の中に流れていたに違いない。誰もそれをただ学ぶなんてことはできないのだ。そして僕は自分の中の思考パターンを変えなければならないのだということが、わかり始めた。以前だったら許さなかったような、可能性というものを信じなければならない。僕はそれまでずっと自分の創造力を、とても狭い、操りやすい規模にまで閉じてしまっていた。それに慣れすぎてしまっているので、僕は自分の頭を混乱させなければならないのかもしれない。
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これは驚きました。
あの自信の塊のようなボブが、本物に圧倒されて、生きかたを変えようと考えたのです。
ボブ・ディランにとっての「私の大学」フォークロア・センターに入り浸って懸命に「フォークソング」を学習していたころです。
生で観るマイクの演奏はすごかったんでしょうね。
思えば、音楽に対するこの真っ直ぐな姿勢が、ディランの真骨頂なのでしょう。
すべてが歌を中心に回っているのです。
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自分のやっていることが正しい方向にあるということ、正しい道を進んでいるということ、言葉とメロディと変化を覚えて知識を迅速かつ直接手に入れつつあるのだということはわかっていた。でも、僕がその知識を実際に活用するのには残りの人生をすべて費やさなければならないかもしれない。マイクはそんなことをする必要がない。マイクはまさにただそこにいた。
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う?ん、ビデオ“Pete Seeger’s Family: SING-A-LONG”を観た時、そんなにすごい人だとは思いませんでした。
ダメですな、やっぱりあたしゃ才能がないのでしょう。
ディランによれば、「フォークソング」とはとらえどころのないものだそうです。
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一つの歌が千以上もの顔を持っている。そしてもしもその曲を演奏したいと思うのなら、そのすべてに会わなければならないのだ。
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ひぇ?。
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フォークソングというのはその意味が様々に変化し、ある瞬間からその次の瞬間に至る間に、もう同じようには見えないかもしれない。それは誰が演奏し、誰が聴いているかによるのだ。
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遺伝子の構造に「フォークソング」が組み込んであるマイクには、「フォークソング」では勝てない。
それでボブ・ディランが下した結論はこういうものです。
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The thought occurred to me that maybe I’d have to write my own folk songs, ones that Mike didn’t know.
もしかしたら、僕は自分自身のフォークソングを、マイクの知らないフォークソングを書かなければならないのかもしれないという考えが頭に浮かんだ。
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なんだかあんまり論理的ではないような気もしますが、正しい方向性でしたね。
本日の結論は、強引マイウェイということで。
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刑務所の前

幻泉館の近くには郊外型の大型書店がありまして、以前は毎日寄っていたものです。
だから雑誌や新刊書籍のチェックは怠りなかったのです。
ところがamazonなんて便利なものができてしまったので、立ち寄り率がめっきり落ち込んでしまいました。
マンガ雑誌も読まなくなったので、今はそのあたりも疎いですね。
先日ひさびさにその本屋さんに寄りました。
地元の食品会社が経営している書店で、看板にはなぜかゴリラが描いてあります。
CDの扱いをやめたので、不良在庫を一枚千円ナリで売ってました。
ここはPC書籍が充実しているんですわ。
富士通の工場があるからなのか、情報専門学校があるからなのかわかりません。
以前はLINUX関連の本もよく買ったのですが、情報はネットで入手できるので、PC関連の本も買わなくなりましたなあ。
PCをいじるようになってもう二十年経ちましたが、すべて本や雑誌から得た知識でやりくりしてきました。
一度も本物のUNIXに触れたことがないのに自前サーバを立てたりしてるんですから、ずいぶんたくさん買ったはずです。
コミックのコーナーに行くと、まああの『夕凪の街 桜の国』が大量に平積みしてあるではないですか。
 →2004年10月25日付日録:夕凪の街 桜の国
この本が売れているのなら、捨てたもんじゃないなと思いました。
で、驚いたのは『刑務所の前』。
ああ、こんなの出てたんだ、知らなかった。
これは悔しいです。
なんの躊躇もせずに第1集と第2集を買いました。
「ビッグコミックオリジナル」の増刊号に掲載されていたんですね。
大ヒット『刑務所の中』は世紀末に出たんでしたっけ。
あの花輪さんが捕まったのは知っていましたが、そんなに服役していたとは知りませんでした。
ガロでよく不思議なマンガを見掛けていましたが、驚きました。
『刑務所の中』は、花輪さんでなければ描けないマンガです。
事実に基づいた詳細な描写なのですが、たとえば「豚になっていく感覚」は誰にでも持てるものではないし、表現することもなかなか難しいでしょう。
映画はまだ観てないんですが、どうだったんでしょう。
その『刑務所の中』に至る「犯罪」を描いたのが『刑務所の前』です。
これが、なぜか主に二つの話が並行して描かれているんですね。
花輪さん本人がボロボロになった「本チャン」の銃を復元していく詳細。
表紙に描かれている少女の物語。
これに再び刑務所内部の細部が描かれたり、70年代のガンマニアの合宿が挟まったりしています。
まさに花輪ワールドです。
花輪ワールドなので、誰にでもお勧めするものはありません。
これを読んで怒り出す人もいるかもしれません。
おかしかったのは、ガンマニアの合宿地が本栖湖であったこと。
中学2年生の時、「高原教室」で行ったのが本栖湖なんですよ。
静かでいいところでしたが、ピンク映画の撮影隊が来ていて、私たちは大騒ぎしたものです。
『刑務所の前 第1集』
『刑務所の前 第2集』
 花輪和一著
 小学館
 定価:各本体952円+悪税

花輪和一『刑務所の中』『刑務所の前』

CHRONICLES #83 マイクに夢中

千本浜 2005年2月23日

さて、独りで何でも演っちゃってた、夜会でのマイク・シーガーです。
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He was tense, poker-faced and radiated telepathy, wore a snowy white shirt and silver sleeve bands.
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やっぱりサムライっぽいですね。
テレパシーを放射しちゃってるあたり、やっぱりディランの文章はおもしろいです。
白いシャツに銀色のスリーブ・バンドは実にレトロな雰囲気ですが、これはダンディなんでしょうか。
宮本武蔵が決闘の時にたすき掛けをしているような光景を想像しました。
あ、そういえばイチロー選手もバッターボックスで袖引っ張ってますね。
関谷ひさしさんの『ジャジャ馬球団』では、血の気の多い選手たちが袖を引っ張るので、ユニフォームのアンダーシャツはノースリーブになってましたっけ。
そして、次に挙げるような様々な楽曲をしっかりと古典的な様式で演奏するのです。
説明はおなじみ『リーダーズ英和辞典』に拠ります。
わからないところは、後でgoogle検索してみましょう。
●デルタブルース(Delta blues)
 ブルースの影響をうけたカントリーミュージック
 →Mississippi delta
●ラグタイム(ragtime)
 シンコペーションを効かせて演奏される。
 多くは2/4拍子の楽曲
 19世紀末から1920年代にかけて米国の黒人ピアニストの演奏で流行したもの
●ミンストレル(minstrel songs)
 これがわからないのですが、ミンストレルショーで歌われた曲でしょうか。
 ミンストレルショーは、白人が黒人に扮して行なう(黒人生活を茶化した)寄席演芸
●バックアンドウィング(buck-and-wing)
 黒人のダンスとアイルランド系のクロッグダンスの入りまじった複雑な速いタップダンス
●ダンスリール(dance reels)
 リール(reel)は「スコットランド高地人の軽快な舞踏」です。
 ここではヴァージニアリール(Virginia Reel)を指すのでしょうか。
 「米国のフォークダンスの一種で男女が向かい合って2列に並んで踊る; その音楽」だそうです。
●プレイパーティ(play party)
 あ、これは全然わかりません。
 う?ん?
●賛美歌(hymns)
●ゴスペル(gospel)
ラグタイムと賛美歌とゴスペルはわかりますが、他のはだいたいああいう感じかなぐらいですね。
当時のディランはフォークソングの資料を読み漁り、レコードを聴きまくっていたわけですが、そのディランがお手本にするような、正統な演奏を、とびきり上手にやっているわけです。
マイク・シーガーという人はいろんな楽器が演奏できるだけではないのですね。
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I was so absorbed in listening to him that I wasn’t even aware of myself.
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ディラン君、夢中になっております。
p.71に入りました。
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水牛楽団

[水牛楽団]休業 カセット

音楽CD(CD-DA)の規格を定めたRed Bookは1981年。
実際にCDプレイヤーが普及して、アナログレコードが市場から消えて行くのにはそれからしばらく時間がかかるのだが、私は80年代半ばにポータブルCDプレイヤーを買ったのだったかしら。
カセットテープ型のアダプタをカーステレオに差し込んで、CDをカーステレオで聴いた時期があった。
そうだ、その過渡期にはカセットテープでアルバムを買ったこともあった。
初期のレベッカや尾崎豊は、カセットで買った覚えがある。
まだJICCという名前だった「宝島」が不良在庫整理でカセットブックを放出した時には、遠藤ミチロウさんのテープを何本か、捨て値で買ったなあ。
水牛楽団のテープは、本屋さんで買ったのだ。
カセットブック『[水牛楽団] 休業』は浅田彰+坂本龍一編集。
如月小春さんも『私の「水牛楽団」体験』という文章を寄せていて、実に80年代的な代物に見える。
ただ、このテープを聴く度に、私は70年代のタイに思いをはせていたのだ。
静かで短い「インターナショナル」や「ワルシャワ労働歌」が不思議だった。
自分でデジタル化してCD-Rに焼いたりしたのだが、数年前にCD-Extraでベスト盤のようなものが出たので、購入した。
 →水牛楽団
先日ふと思い立って高橋悠治さんの本が読みたいと思ったのだが、これがなかなかないのである。
ヤフオクで白水社から出ていた『水牛楽団のできるまで』に入札したのだが、締め切り時にアクセスできなかったので、逃してしまった。
3200円で終了していた。
1981年発行、定価1400円の本である。
まあ、品切れ再版未定や絶版の本はぼちぼちと探すことにしよう。
ウェブで読める文章もかなりある。
 →高橋悠治:著作
昔の本がなかなか見つからないので、平凡社ライブラリーの『高橋悠治 コレクション1970年代』を見つけて買った。
高橋悠治 コレクション1970年代
『高橋悠治 コレクション1970年代』
平凡社ライブラリー
2004年7月10日
文庫判 本文334p
定価:本体1300円+悪税
 第一章 ことばから音楽へ
 第二章 時空の網目をくぐって
 第三章 生きるためのうた
晶文社から出ていた次の3冊の本から抜粋して編集した、よりぬき高橋悠治といった趣。
 『ことばをもって音をたちきれ』(1974年)
 『音楽のおしえ』(1976年)
 『たたかう音楽』(1978年)
小林秀雄を葬り去った文章やサティ論、芸能山城組批判、コンピューターによる音楽の可能性など、まあ密度の濃いおもししろい文章が多いこと。
でも、今回は水牛楽団のことを考えたかったので、とりあえず「第三章 生きるための歌」をまず読む。
両手を砕かれて射殺されたビクトル・ハラや、軍事クーデターの日に殴り殺され、木に吊るされ、古タイヤと一緒に燃やされたというニタヤの話。
歌のために殺された人達だ。
音楽を語る時に闘争や生活なんて余計なことは不要だと、「春一番コンサート」に来た人でさえそんなことを言ったりする。
高橋悠治さんは負けてしまったように見えるかもしれない。
でも、「9.11」の犠牲者追悼コンサートで、ニール・ヤングは放送自粛曲となっていた「イマジン」を歌った。
そのことに、どれだけ多くの人が共感できたことか。
巻末に三橋圭介さんの解説が付いていたが、ウェブでよく似た文章を見つけた。
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水牛楽団(1978?1985)はそれまでの生活をすて、音楽をすてた。人々と対 話し、手づくりの雑誌で反体制の声をくみとり、発言しつづけた。全国をめぐり、さまざまな集会でケーナ(西沢幸彦)をふき、タイコ(八巻美恵)をたたき、ハルモニウム(福山伊都子)に風をおくり、大正琴(高橋悠治)をつま弾き、歌(福山敦夫)をうたった。
西洋音楽を操るような洗練された技術はそこにない。ないというより、あえてそういう技術を否定したところに水牛楽団はあった。不慣れな楽器にふりまわされた手と手のあいだから、楽譜には書きあらわせない音の厚みや綾がうまれる。
—————————————–
 →水牛楽団について 三橋圭介
日本の音楽は高橋悠治さんが考えるような方向には変わらなかった。
意味は薄まり、快楽的に消費されるだけだ。
でも、本当に「音楽で社会を変えることはできない」のか?
ソウル・フラワー・ユニオンが歌うように、「あのブッシュやシャロンみたいなゴロツキは」「世界のあまたの歌が 首根っこを押さえる」ことができる。
きっとこの戦争をやめさせることもできると思うのだ。
カセットブック [水牛楽団]休業
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